
ありふれた設定の方が小説として難しい
短文、SSの書き方を覚えるための習作として始めた恋愛SSシリーズ「まるで純度の高い恋の結晶のような…」(略して「純恋結晶」)ですが、1つ1つのエピソードの内容についても、結構(自分にとっては)挑戦的な内容になっています。
それは「あえて“ありふれた”設定・ストーリーに挑戦する」ということです。
誰にでも起こり得るような、ごくごくありふれた人生の一場面…それを切り取って短い小説を創ろうという試みです。
実は「ありふれた」「普通の」物語を書くということは、「変わった」「特殊な」物語を書くよりも、よほど難しいのです。
それは「“普通”な内容の小説は“特殊”な内容の小説よりも“おもしろさ”を出すのが難しいから」です。
たとえば、主人公が特殊な能力を持っていたり、タイムスリップが起きたり…などといった特別な設定があれば、それだけで「おもしろそう」と読者の目を惹きつけることができます。
しかし、そういった特別な設定が一切無かったとしたら、一体何で読者に「おもしろい」と思ってもらえるのか…
そこには作者の“センス”が求められるのです。
特殊な設定で興味を惹けない分、ストーリー・テリングや文体、キャラクターや台詞回しの魅力などがより求められます。
逆に言えば「ありふれた設定でおもしろい小説を書くことができれば、それはその作者に物書きとしての技術・センスがある」ということに他ならないのです。
…つまり自分はそんな風に“物書きとしてのスゴイ技術とセンス”を身につけたいと思っている野心家ということになります
(プロにしろアマにしろ、物書きなら誰でも欲しいスキルだとは思うのですが…。どうなんでしょう?)
もちろん、ありふれた設定であるがゆえに「ただのつまらない小説」で終わってしまうリスクもあります。
ですが、リスクを求めてでも“挑戦”をしていかないことには、自分の能力を伸ばすことはできないと思うのです。
1つ1つの物語が短いSSなら、たとえ失敗作に終わったとしても傷は浅くて済みます。
(さらに予め「これは習作です」と銘打っておけば、多少のリスク回避になります。)
そうやって、いわば“修業”のような気持ちで書いてみたのが、このSSシリーズなのですが…
書いてみて、実際、自分のスキルが鬼のように上がったのは実感しています。
元々自分は短編(小説を短くまとめること)がそれほど得手ではないと思っていたのですが、やってみたら意外と「濃い内容を短くまとめる」ことができるようになりましたし…
少なくとも、挑戦したことを後悔したことは一切ありません。
むしろ「チャレンジはしてみるものだなぁ」という気持ちでいっぱいです。
…まぁ、そうやって書き上げたものが、他人様から見て(評価的に)どうなのかは、未だ感想もいただけていないので分からないのですが。
(純文学系のジャンルはそもそも読者様が集まりにくくて苦労しています)