
二人称と一人称は普通に混在し得る
短文、SSの書き方を覚えるための習作として始めた恋愛SSシリーズ「まるで純度の高い恋の結晶のような…」(略して「純恋結晶」)ですが、ちょっと変わった形式を採用しています。
それはズバリ「二人称」なのですが…
(二人称とは、「君は…」「あなたは…」という風に、英語で言うところの「You」へと視点を向けた書き方です。)
実を言うと、べつに「二人称を極めてやる!」というつもりで書き始めたわけではありません。
この一連のSSは「主人公」と「その相手役」の“ふたり”を中心とした物語になっているのですが、その二人の名前や細かい設定等については本編で一切出てきません。
(できることなら、読者様が「主人公」か「その相手役」のどちらかに自分自身を重ねて楽しんでいただけたらいいなぁという“脳内補完型の疑似夢小説”的なモノを目指して書き始めているので、あえて名前は付けていません。)
…で、出て来ない“名前”の代わりに「あなた」や「君」という呼び名を使って書き始めたところ…気づいたら二人称になっていました。
ただ、語り手である「僕」や「私」にも自我や人格があるので、物語は「君」や「あなた」についてのみ語られるわけではなく、その「君」や「あなた」に対する語り手の心情描写も当たり前に出てきます。
そして、そんな語り手の独白は自然と「僕は…」「私は…」という書き方になりますので、この部分について言えば「一人称」になるわけです。
つまり、二人称と一人称が混在しているという…。
自分も、最初に気づいた時は「あれぇ?」となりました。
「この小説、結局、一人称と二人称どっちなんだ?」と。
そもそも「人称」なんて学校の国語の授業でも習いませんし、二人称小説をちゃんと読んだこともないので、「正しい二人称」がどんなものなのかもさっぱり分かりません。
結局そこはナゾのまま、自分でも「一人称なのか二人称なのかよく分からない」「二人称“っぽい”」小説という感じになっています。
ただ、この一連のSSを書いていて感じたのは「一人称と二人称って普通に混在するんだな」ということでした。
もちろん一人称を一切交えずに書くことも可能かも知れません。
でも、それでは三人称の固有名詞(人物名)部分が「君」や「あなた」の代名詞に置き換わっただけで、「二人称ならでは」の「うまみ」が上手く出せない気がするのです。
二人称にしか出せない“味”があるとするなら、それは「語り手にとって“特別”な“ただひとり”に向けた視線」なのではないかと、自分は思います。
だからこそ、その“大切なたった一人”に対する“語り手の心情”を、きっちり主観的な言葉で描き切った方が、面白いものができる気がするのです。
…それに、小説という分野においてこそ「二人称は珍しい」もののようですが、別のメディアに目を向けてみれば、一人称と二人称が混在したモノって、もう数十年以上(あるいは数百年?)も前から普通に存在し、なおかつ現在も普通に量産され続けているんですよね。
そんな他メディアから、小説が技法を“輸入”してはいけないという法も無いでしょうし…。
